
今現在読んでいる小説「東天の獅子」の1巻の感想です。
あらすじ
明治時代の格闘の壮大な話になっている。
1巻の内容は嘉納治五郎が柔道を創設し、講道館四天王の出会いを主に描いている。
登場人物
嘉納治五郎(かのう じごろう)
柔道の創設者。文武両道で道場と両立し学習院の教員もしていた。講道館と嘉納塾という私塾で学問も教える。
講道館四天王
講道館は今まで続く嘉納治五郎が立ち上げた柔道の総本山。
嘉納の弟子の中でも優秀だった「西郷四郎」「横山作次郎」「山下義韶」「富田常次郎」の4人は四天王と呼ばれる。
木村政彦(きむら まさひこ)
昭和の時代を代表する柔道家。講道館柔道七段で鬼の木村の異名を持つ。現在でも歴史上最強の柔道家として度々名前が上がる。
前田光世(まえだ みつよ)
ブラジルで2000戦無敗の逸話を持つ柔道家。今の総合格闘技は前田光世がいなかったらなかったとも言われている。
武田惣角(たけだ そうかく)
大東流合気柔術の創設者。嘉納治五郎と同い年。
作中では謎が多いが、圧倒的な強者として描かれている。
1巻の感想
序章は木村政彦の話となっている。
まえがきでは、元々は前田光世の話が書きたかったと語っていたが、1巻の時点で前田光世は名前しか登場しない。
木村政彦は力道山と対戦して負けたイメージが強いが、彼が柔道からプロレスに転向していった経緯や当時の心情などリアルに描かれている。
1章からは時系列が戻り講道館の話となる。
木村が活躍したのが戦前~戦後頃の時期で、講道館の設立時は明治時代。
治五郎と武田惣角の立ち会いや、四天王との出会いを描いている。
時系列の組み立て方がうまい
小説としては、時系列の組み立てが非常によくできており読みやすく感じた。
章が変わり、少し戻ったり進んだりして「パルプ・フィクションかよ!」って感じなのだが、これが脳内で上手く繋がっていくときの感覚がわりと爽快だったりする。
嘉納治五郎の偉大さ
文武両道で知られる嘉納治五郎だが、この時代には剣術や柔術はもはや野蛮なものだとされ、世の中からすたっていく一方の文化だったのを嘉納治五郎の行動により立て直していく。
立て直すどころか、柔道は後に日本の国技にまでなっているわけで…。
戦後に國井善弥が武道の廃止を救った逸話があったりもするが、治五郎は世の中から不要だと思われていた柔術を嘉納流柔術へ昇華させ、柔道を現在に至るまで繁栄させていったのである。
まとめ
獏先生いわく、今の総合格闘技の発展は前田光世なしにはありえなかったという。
(現在2巻の終盤まで読んでいるが、その前田がいっこうに登場する気配がないのだが・・)
話は警視庁が主催の武術大会が開催されるとかで、世の武術家たちが大会出場へ向けてはしゃぎまくっているというところ。
全4巻まであるので完読したら各巻ごとにまたレビューしていく。
総括すると、細かい内容はさておき格闘技好きなら普通に面白いと思えるはず。
余談だが、強さの言及をしていくと必ず「当時の日本人なんて身長150cm台とかなに今のUFCの重量級の選手にタイマンで勝てるわけねーだろww」という当然な疑問も出てくるわけだが、個人的には、こういう胡散臭さも含め、達人幻想な部分も楽しんで読んでみてほしい。
とくに嘉納治五郎の凄みが単に戦闘の強さだけではないのは読んでいけば理解できるだろう。