
先日、古本屋の100均コーナーで「魔界の塔」という小説をジャケ買いして読み終わったので雑感をまとめておく。
あらすじ
クリアすることができないRPGゲーム魔界の塔はラスボスに敗北すると魂が持っていかれる..。
そんな噂を聞いたゲーマーニートの主人公が魔界の塔をプレイし謎を解決していく物語。
感想
ゲーム題材の小説で表紙絵もなんかそそられたので100円だったし購入してみた。
文字数は11万文字ちょっとの小説で読みやすいので3~4時間くらいで読み終えた。
気になった点を紹介していく。以下ネタバレ注意。
RPGを攻略するストーリーではない
まず冒頭からクリアできないゲームのプレイ場面から始まり、プレイしている者がラスボスに負けると現実世界で意識不明の植物状態になってしまう。
冒頭でゲームに魂を持っていかれる人物は主人公ではなく、その後に主人公がゲームの存在や噂を後輩から聞いてゲームをプレイする流れになる。
この時点でぼくは完全にゲームの中に閉じ込める展開になるものだと思って読んでいた。
グリードアイランド的な物語になるものだと…。
だが、魔界の塔をプレイしてラスボスに勝てないと悟った主人公はゲームを消して諦めてしまう。
しばらくすると、親戚のコネでゲーム会社へ就職することになるのだが、このゲーム会社に魔界の塔の製作者がたまたまいて主人公は魔界の塔の謎に迫る…。という流れになっていく。
ここまでは、良い意味で展開的に裏切られた感はまだあるので、この先どう展開していくのか気にはなっていた。
が、製作者側と接触して、ゲームの謎が判明するのかと思いきや、物語はゲーム製作者の家族の事件の話になっていく…。
この辺から雲行きが怪しくなってきたと感じたが、結局最後まで家庭内事件の話で終わってしまった。
なぜ魂が取られるのかとか、そもそもなぜクリアできないゲームが出回ったのか、などは触れられることはなく、単なる超常現象、怪奇現象だったという話で終わってしまった。
色々とツッコミどころはあるのだが、この内容ならゲームを題材にする意味があまりない。
1冊の本でも雑誌でも物件でも携帯電話でも何でも良い。
そもそもゲームの話ではなく、製作者が悪い奴だったという話で終わるので物語全体で見るとまるでゲームが関係ない。
パッと思いついた限りで謎な点
大前提として最初に振られるテーマ「クリアできない謎のゲーム」の伏線を回収しないで終わるという何とも言えない悶々とする内容なのだが、細かい点でもツッコミどころが多い。
ゲームの攻略法をネットで調べない矛盾
魔界の塔の話はPCオタクの後輩から主人公は聞くのだが、ネットに強いやつがネットでこのゲームの情報を集めないのは不自然すぎる。
まだネットが発達する前の話というわけではなく、ゲームの製作者が魔界の塔の異変に気がついたのはネット掲示板の書き込みをみたことがきっかけだとあるので、色々と辻褄が合わないように思える。
クズニートが急にキレキレで真面目になる
24歳でニートを貫こうとして実家に寄生してゲーセン通いのようなやつが急に就職して、急に事件にもグイグイと首を突っ込んでキレキレで事件の全貌を終盤でまとめだす..。
何か燃えるようなきっかけがあるわけでもなく、意識不明の友人を助けようという気持ちもないような奴が急にスイッチが入って積極的になる。
カイジのようにクズニートでも窮地に追い込まることによって潜在能力が開花するというのは分かるが、この物語の主人公は自分には特に害もないと思っていたことに急に興味を持ち出し、他人に鑑賞をしだすのだ。
主人公は最初から最後まで常に安全圏なので、ニートのクズがわざわざ無駄にリスクを取る必要性がない。
これといったきっかけもないのに前半と後半で別人格のように変化するのはさすがに読んでいても違和感があった。
何にもならない登場人物や無駄な描写が多い
ちょい役が立っている作品や何気ないシーンがグッとくるような物語は良作が多いとはよく言ったもので、駄作には意味のないキャラや無駄なシーンが多い。
特にメイドの格好をした主人公のヒモ女に関しては、意味のない登場をしたので黒幕なのかと最後まで深読みしてしまった。が、本当に最後まで何もなかったという…。
他にもゲーム会社で働いているシーンなども特別に意味があるシーンがないので、このページで事件の全貌なり伏線なり色々他にもやれることがあるように思えた。
まとめ
読み終わって「ん?終わり?」って感じだったのでマジかと思ってネットでレビューを調べてみたがやはり低かった。
また、これも読み終わって知ったことだが、この作家はかなり若者に人気のようだ。
ぼくは最近、本屋に週1で行くのだが、本屋に山積みになっていて気になったメモに残していた「俺の残機を投下します」という小説の作家と同じ人だった。
リアル鬼ごっこという名前も聞いたことがあるが、かなり売れた小説でこの小説と同じ作家が書いたものだという…。
まあ作品には当たり外れもあるし、合う合わないもある。
最後に褒めておくと、確かに世界観とか面白くなる風なものは魔界の塔からも感じ取れたので、彼が人気作家な理由は何となく分かる気はした。
結局のところ小説は商品であるわけだから、売れる作品というのはそれだけで価値があるし、面白ければなお良いわけだ。
魔界の塔を読んで山田悠介氏の作品への興味が強くなったので新刊である「俺の残機を投下します」は読んでみようかと思う。
皮肉にもこの小説もゲーマーが題材の作品のようなので、魔界の塔から約10年でどれほど作品クオリティが上がっているのかも楽しみだ。