
エスジェイです。
数ヶ月前になりますが、映画版のルックバックをアマプラで視聴したので、簡単に感想を書いていきます。
あらすじ
主人公の藤野は絵が上手く漫画を描いて学級新聞に掲載していた。
ある日、引きこもりの京本が漫画を掲載したいと言ってるので掲載枠を一回ゆずってくれないかと、先生からお願いされる。
京本の漫画が掲載されると、京本の圧倒的な画力に藤野は驚愕し、嫉妬する。
その日から悔しさをバネに、藤野は画力の向上に全力を注ぐことになるのだが..
感想
話の本筋は、努力と才能がテーマになっています。
藤野は年相応に絵が上手ではあるが、同級生の京本は尋常ではないレベルに絵がうまいわけです。
その絵を見て藤野は嫉妬し本気になるわけですが、これは実は藤野が京本に才能で負けていたわけではなくて、単純に費やす時間が引きこもりの京本の方があるというのもあります。
本気モードの藤野が2年間描き続けたスケッチブックの数と、京本の家の廊下に並べられたスケッチブックの数で描いた絵の量の差を演出していますね。
起きている時間すべてを絵に注いでいたであろう京本と、勉強や遊ぶ時間を削ったとはいえ、普通に日常生活を送っていた藤野とでは使える時間に圧倒的な差が出てしまうわけです。
実はここも才能と努力とは別に、引きこもりで絵に没頭できた京本の運的な要素というのも、藤野との画力の差には影響を及ぼしています。
京本の詳細な家庭環境は作中では描かれていませんが、この年齢で引きこもって好きなことに没頭できる環境のあった京本は見方によっては、親ガチャの勝者でもあるわけです。
さらに、漫画的な絵のうまさと、絵画的なうまさの違いというのもあって、京本はあくまでも純粋な絵描きで、漫画を作りたいとは作中を通して一度も言っていません。
あくまでも尊敬する藤野のアシスタントをして、大好きな絵の勉強をしたいというのが彼女の気持ちとして描かれています。
だから、京本は純粋に藤野の四コマのファンだったわけです。

ストーリーの視点が主人公である藤野から進むので、京本の視点を見落としがちになるのですが、京本は純粋に藤野の漫画が好きで、自分は絵描きではあるが、漫画家志望ではないので、比較の対象でもないわけです。
しかし藤野は勝手に京本をライバル視しているわけですね。このへんも面白い点です。
藤野からしたら、圧倒的に自分より格上の相手が実は自分のファンだった..
このあたりの詳細も作中では描かれてませんが、仲良くなるにつれて、どうやら京本は本当に自分の漫画が好きで、自分のことを尊敬していると気がつくわけです。
同時に京本は、絵がうまい以外の取り柄がなく、コミュ層でもあるので自分が支えてあげないと..という思いも出てきて京本をアシスタントにしているというのもあるのでしょう。
最後まで「最初は京本に嫉妬していた」とは打ち明けなかった藤野ですが、成功した後も絵では京本には勝てないという敬意は持ち続けていたわけです。
後半、京本が襲われるシーンは当時のトレンドも交えつつ、お得意の残忍さも出ててゾッとするんですが、最後のパラレル路線みたいな話がアニメで観てもイマイチ意味が分からなかったです。
これは意味がないことに意味があるという、ハロウィンのことしか考えられなくなるアレなんでしょうか..。
特別おもしろい展開はしなくても、淡々と目標に向かって話が進むだけで見入ってしまう不思議な話です。
まとめ
個人的には藤本タツキ作品に関しては、一周まわって、やっぱりそんな面白くはないんじゃないかな?と思えてきていますが、ルックバックに関しては名作であることは間違いないですね。
藤本タツキみたいな、おそろしく漫画IQを問われるような作品がちゃんと評価されてる嬉しさ半分、本当に一般層はチェーンソーマンとかファイアパンチとか理解できてんのかという謎もあります。