
山田悠介の小説、自殺プロデュースを読んだのでレビューしていく。
山田悠介氏について
読みやすくてついつい読んでしまう。当ブログでもレビュー3作目となる。
この作家の特徴として・・序盤は読みやすく、設定も面白いので続きが気になってついつい読んでしまうところがある。
が、中盤から終盤にかけて毎回詰めが甘いというか、雲行きが怪しくなり、いろいろとツッコミたい終わり方で終わる特徴がある..。
山田悠介氏の小説の批評は、一般的にも賛否が多く(とくに否)たしかに多々どうかと思うところは多いのだが、それでも個人的には読めば読むほど好きになってきた。
一言でいってしまえば、売れているのは確かな理由があるということだ。
設定が面白い
本作、自殺プロデュースについて。
まず、設定が面白い。
ある演奏家の少女たちが、一人で死ぬのが怖い自殺志願者へ対して最後の演奏をしてくれる。
いわゆる自殺ほう助をしているわけだが、この吹奏楽部のメンバーが一人ひとり個性的でミステリアスに描かれている。
序盤から自殺志願者のエピソードが入り、謎の演奏少女たちが登場して謎を呼ぶかたちになるため、すごく続きが読みたくなる。
良かった点
・基本設定
・キャラクター設定
・序盤のストーリー展開
悪かった点
・キャラが活かしきれてない
・中盤以降のストーリー
このあたりは山田悠介氏の小説では毎度のことのような感じもするが、とにかく舞台設定やキャラ設定は抜群に良いのだが、中盤以降からいろいろとツッコミどころが多くなったり無理やりな展開が多くなる。
この作品でいえば、主人公の女の子が憧れている先輩の指揮者が急に暴走しだしたり、他のメインキャラクターもどんな人物なのか魅力的なキャラ設定こそあるものの、メインメンバーたちはとくに何も触れられることなくフェードアウトしてしまう。
「あいつは何のために登場したんだ…。」と、ツッコミたくもなる。
最後のオチも何とも無理矢理感があって歯がゆいというか、じれったいというか、なんとも言えない気持ちになる。
まとめ
総括すると、非常に読みやすい。
余談だが、一般的にラノベは読みやすい小説の部類に入っていると思うが、実は内容がどんどんオタク向けになっているため、実際はそこまで読みやすい部類ではなくなってきている。
たとえば、異世界転生でもお約束パターンはいくつもあり、ギルドを組んで冒険して~みたいな展開ひとつでも、そもそもギルドって何なんだ?みたいな疑問がいくつも出てくる。つまり前提知識がそれなりに必要になってきているということだ。
現代が舞台の学生ものでも、ラノベの場合はかわいい女の子にぜか冴えないDTが急にモテ始めるというのもひとつのテンプレだが、こういう話は入り込みやすいようで非常にオタク度合いが高いので実はとっつきにくいと感じる人のほうが割合的には多かったりする。
そういう意味で、本当に読みやすい小説というのは山田悠介氏の書く小説なのではないだろうか。
ラノベとも児童小説ともまた違ったジャンルでここまで10代ウケの高い作家もそういないだろう。
作品の総括をすると、序盤のテンポの良さとか、設定とか、世界観とかは相変わらずおもしろい。
自殺するときに演奏してくれる吹奏楽部やチアリーダーがいれば、たしかに勇気づけられるだろうし、そういう活動に参加している女子大生ってだけでもうミステリアスで興味深い。
とはいえ、最後まで読みきった読後感でいうと、中盤~オチの展開が微妙なのでなんか損したような気分になってしまう。
自費出版した最初の小説のリアル鬼ごっこはまあしょうがないにしても、以降の作品に関してはちゃんと出版社から商業作品として世の中出してるわけなんで編集者がもう少し助言とかしてくれないものなかと疑問に思うところもある..。